「新選組」と「新撰組」正しいのはどちらの漢字?なぜ二つの表記が存在するのか

新選組か新撰組か

「しんせんぐみ」ファンが必ずどこかで直面する「新せん組」の表記問題。

「新組」か「新組か」。

もはや新選組あるあるといっても過言ではない。

なぜ「新撰組」という名前になったのか

新選組の前身は「浪士組」という名前だった。

江戸で隊士を募集した時からこの名前で、壬生にいる浪士組で「壬生浪士組」と呼ばれていた。

文久三年三月十二日に芹沢鴨、近藤勇を中心とした京都居残り組は会津藩のお預かりとなる。

しかしこの時はまだ、身元引受人が決まったというだけで、まだ「壬生浪士組」という名だった。

島田魁日記によると文久三年の八月十八日あたりに、会津藩から「新撰組」あるいは「新選組」という名を送られたそうだ。


「選」と「撰」どちらが正しいのか

結論から言うとどちらも正しい。

なぜならば「新選組」も「新撰組」も隊士達の手紙や会津藩の正式な文書の中から見つかっており、どちらも使われていた為。

「選」

元治元年(1864)五月二十日 近藤勇が多摩の小島鹿之助に送った手紙の封筒の実印には「選」の字が使われていた。(手紙は立川市個人蔵)

「撰」

慶応三年(1867)六月の会津藩の文書には「撰」の字が使われている。

松平肥後守御預新組之儀、五ケ年以来召捕者其外非常役前勉励

相勤、功労不少二付、身分・等級を立、

(中略)

組 局長 近藤勇

(中略)

副長 土方歳三

「新組」はそもそも会津藩にあった組織の名で、武術に優れた藩士の子供・弟たちで結成されていた。

そのため会津藩の文書などには「撰」の字で記録されている。

なぜ2種類の漢字が使用されていたのか

現在の辞書を引くとどちらの意味も一緒である。

選・・・良いほうをとる

撰・・・良いほうをとる

しかし「撰ぶ」は書物や短歌などの良いほうを選ぶときのみ使用される、と注釈が付く。

意味から考えると選び抜かれた武士の集団という意味の方が正しそうな為「選」が適しているように思われる。

しかし、当時は漢字自身が持つ意味はそこまで重視されておらず、読み仮名の「おと」さえあっていればよいという考えだった。

そのため当て字が多く使われていた。

例えば新選組総長だった「山南敬助」は「山南」、「三南」と二つの表記で書かれていることがある為、「やまなみ」ではなく「さんなん」と呼ぶのが正しいということが分かる。

一番隊組長・永倉新八も、「永倉」、「長倉」と二つの「ながくら」が使用されていた。

当時の江戸の識字率は世界トップとは言え、現代程しっかりとした教育カリキュラムがあったわけではなかった。

さらに言葉を使用する場面は主に会話がおおく、漢字を意識する機会は少なかったと思われる。

間違った意味の漢字を使っていても指摘されることも少なく、音さえあっていれば良いという感覚だったのではないか。

まとめ

表記としては「新選組」も「新撰組」もどちらも正しい。

ただ、近藤勇が使っていた「新選組」の実印が見つかっていることから、現在、映画や書籍では「選」の字を使用することが多くなっている。

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